孤独に耐えうること、メンターを持つこと







 起業家は事業を開始したその瞬間から、自分が下す決断すべてに、自分で責任を取らなくてはいけなくなります。事業は、いつも順調に進むことばかりではなく、さまざまな難しい局面や、危機に陥ることがあります。時には、

従業員を解雇する
長い間付き合いのある取引先との関係を解消する

などという起業家にとっても精神的に厳しい決断を下さなければならないことも起こってきます。そのため、起業家は自分が下す判断に対して、意見を異なる人達などとの関係が悪化することもあり、その意味では、起業家は「孤独に耐えうる」ひとでなくてはならないといえます。

 しかし、一方で起業家が現在進行形で経験している難しい局面に対して、それを完全に一人で決断してしまうのではなく、自分にとって信頼のおける相談相手(メンター)とよく話し合った上で決断することのほうが望ましいといえます。

 起業家が直面している問題というのは、それが全く同じような状況でなくても、同様な経験をしている人たちというのは必ずどこかにいるもので、そういった経験をしている人からアドバイスをもらいつつ決断を行っていくということで、確度の高い決断を行えるようになります。

 アメリカの起業家教育では、講義の内容も実践的なフィージビリティスタディ(実行可能性の確認)が多く、その講師はどちらかといえば「先生」というより「メンター」として参加しているといってもよいでしょう。

 起業家が「メンター」として求める人の経験としては、たとえば以下のような経験がある人となります。

・起業家
実際に自分で事業を行い、拡大させた経験のある人

・投資家・ベンチャーキャピタリスト
様々なベンチャー企業に投資した経験があり、ベンチャー企業特有の発生しやすい問題などを熟知している人

・スモールビジネスのコンサルタント
中小企業経営の相談を数多く受けた経験のある人

・公認会計士・税理士
様々な企業を財務的な観点から相談に乗って、起業家が起こしやすい問題を知っている人

 事業を行っていく上で発生する問題というのは、事業が拡大する段階(ステージ)によっても、相談すべき相手というのも変化してくるものなので、自分自身の状況に応じて適切なメンターを選んでいく必要があります。

 日米を問わず、どんな大企業であっても、取締役会は、「相談役」という立場の人を用意するものです。起業家はその基本的な態度として、自分の決断に対してすべての責任を持つということが必要ではありますが、それと同時に、常によきメンターを求め、様々な意見・情報を参考にしていくということが大切なことといえます。

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財務諸表を理解し、常にそれをもとにコントロールすること






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