既存市場のほうが「Business Startup」には成功しやすい







最近は日本でも「起業」という言葉がよく使われるようになっていますが、そのとき意味として、「新規事業」「新規市場創出」をさしていることが多くあります。特に、大企業のサラリーマンの方などが「起業」という場合に、こういった意味であることが多いようです。言葉の使い方が、どちらが正しいというわけではありませんが、英語での単なる ”Business Startup” というような場合と「新規事業」「新規市場創出」というような場合とでは、共通する部分も多いものの、違う点も多くあります。

まず、共通点として、単なる”Business Start up” の「起業」でも、「新規事業」の「起業」でも、どちらでも「事業」や「ビジネス」が成立するために絶対に確認しなければならないことは

「客がいるか? 客がいるか? 客がいるか?」

です。これが絶対に必要なことです。だからこそ、どちらの「起業」においても、この

「客がいるか?客がいるか?客がいるか?」

についてのフィージビリティのチェックを行う必要があるのです。

 リストラや環境の変化によって何か「事業を始めなければならい」という起業ニーズが極めて切実な場合には、「既存市場」に「新規参入」したほうが、取り急ぎの事業をまわすということには成功しやすくなります。ただし、参入した市場はすでに存在している市場ですので、供給者側と消費者側との関係がすでに出来上がっている場合が多いので、すでに存在している他者ではなく、「なぜ自分(達)から買いたいと思うか」というところの分析は徹底的になされた上で行っていくべきものです。

 逆に、全くの新規事業の場合には、市場の中でその商品・サービスを買ったことがない人たちが多いため、まず「その商品・サービスにお金を払うか?」ということについてから考え始めなければなりません。そして、もしその商品・サービスにお金を払おうとする人が全くいなかったら、成立しません。米国でも、「まるっきり新しいアイデア」をよく思いつく人がよく言うこととして「ライバルがいない」というのがあるようです。しかし、「ライバルがいない」ということは、「実は客が全くいない」ビジネスである可能性が高いのです。

 新規市場を創出しようとする場合に調査する内容として、「面白いと思うか?」という項目が入ってくることがあります。仮にその調査項目に関しての「お客さんと想定される人たち」の反応が極めて良好なものであったとしても、それがビジネスとしてつながるとは限りません。なぜなら、人が「面白い」と思うことと、「お金を出して買う」ということにはそれほど強い関連性がないからです。「面白い、と思うけれども自分はお金を出してまでは買わない」というケースは、どんな業界においても非常に多いのです。

 起業家というのは新しいことを起こしていくことも求められますが、それ以前に「事業を成立させ続けること」が絶対条件として必要なことです。そのため、ビジネスをスタートさせる段階では、そのあたりの判断は適切に行っていく必要があるのです。

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「これまでやってきたこと」「やりたいこと」は「売れること」ではない






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