「経営者」も実は「株主」にコントロールされる存在







 日本では、勤労者人口の多くが「サラリーマン」として生計をたてているので、その立身出世の最終目標が「上場企業の社長」ということも多くあります。しかし、「社長(経営者)」というポジションも、全く株を持っていないような場合には、「株主」の意向に従属的で不安定なものです。「会社」は本質的には「株主の所有物」であって、「経営者」は株主の意向に大きく影響されることになります。

 最近は日本でも、上場企業で経営陣とは考え方の違う「ものをいう株主」として投資ファンドなどから敵対的な買収を仕掛けられ、その結果、株主総会で経営者の留任の決議が否決されるようなニュースも目にするようになっています。これまでの日本の上場企業では、大手上場企業同士の「株式の持ち合い」などによって、取締役会の意向に近い会社が大口の株を保有していて、株主総会で取締役会と対立するということが少なかっただけで、本質的な部分では最終的には株主の承認を経なければ、経営権の執行ができないものです。

「アントレプレナー研修」でゲストスピーカーとして登場する起業家や、実際に起業家として成功した人によって書かれた文献などでは

「起業家は株主総会の議決権の51%以上を死守すべき」

という見解が示されていることが多くあります。

 起業家は、初期の段階では、「ヒト、カネ、モノ」等のリソースがすべて不足していることが多く、特にビジネス・スタートアップ時点での「カネ」の部分を投資家に助けてもらうということも多くなります。その場合、株主総会の議決権の多くを投資家に渡すことになります。

 投資家から投資を受けて事業を始める起業家は、経営がうまくいかなければ、その経営責任を問われることになります。逆に、事業がうまくいった場合にも、投資家と起業家との間には問題が起こりやすくなります。

 事業がうまくいけばいくほど、投資家はその事業で得られた事業所得からの配当を多く求めるようになります。また、起業家のアイデアと実行力によって拡大した事業であったとしても、株主と起業家の間に意見の対立等が発生する場合には、株式の保有比率の高いほうが株主総会での議決権を持つことになりますので、通常は投資家のほうの意思が反映されやすくなります。株主と経営者の意見対立が激しい場合には、起業家は株主による議決によって、その会社から追放されてしまうようなことも起こってしまうのです。

そのため、起業家が事業を行うにあったって目指すべき目標とは、

・「アントレプレナー的なプロセス」によって事業をシステム化しながら売却可能な状態に育てる
・経営の意思決定の自由を確保するために、株主総会での議決権を維持する

というようなこととなります。

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起業して「自由意思」で行動できるようになるために






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