「事業=自分」から組織化していく「アントレプレナー的プロセス」







 新規に事業を始める際に、「理想の組織図」を描き、事業を売却可能な状態に育てながら、「株主」のポジションを目指して進むべき、といっても、それはそう簡単なことではありません。

 もし、たった一人で起業をする場合には、その事業の組織図のすべてを「自分」という一人で担当することになります。時には、最終的に目指すべき「株主」というポジションだけが「他人」で、組織図上のそのほかのポジションが全部「自分」という、本来アントレプレナーが目指すべき組織図とは全く逆の状態から始めていくことになります。

 ビジネスをスタートさせ、それを拡大させていくプロセスというのは、基本的には、以下のようなプロセスの繰り返しでなされることになります。

 「顧客に価値(商品・サービス)を提供する」
 「顧客から正当な対価を受け取る」
 「従業員や仕入れ業者に対して対価を支払う」
 「起業家自身が報酬を受け取る」
 「必要なリソースに再投資する(事業に対して資産性の高いもの)」

「専門職的なプロセス」に進むにしても「アントレプレナー的なプロセス」に進むにしても、起業が成功するためには、

「顧客に価値(商品・サービス)を提供する」
ことが最初に絶対に必要ですので、ビジネス・スタートアップの初期の段階においては、この部分のプランニングをしっかりと行うことになります。(次章を参照)

 商品・サービスの開発に成功して、顧客から十分な対価を受け取り、利益を確保できるようになったときに、起業家としての志向性の違いが大きくなることになります。

 「専門職的なプロセス」で事業を行っている場合には、利益が出るようになった際、その収益の多く(ほとんど)を自分の報酬として受け取ろうとする傾向があるようです。(モラルがきわめて低い人の場合には、利益をごまかして脱税のようなことを試みてさらに報酬を受け取ろうとする場合もあります。)確保できた利益のほとんどを「起業家自身の報酬(事業性の低いものへの消費)」にしてしまうような場合には、事業を将来に向けて発展させるために利用できる資金は少なくなります。そのため「アントレプレナー的なプロセス」での発展の加速度がどうしても遅くなり、スモールビジネスにとどまりがちになります。

 事業によって利益が確保できるようになった場合に、それをどのように処理するか、は起業家自身で自由に決めることですが、「アントレプレナー的なプロセス」を目指すのであれば、目指すべき状態に向けて会社の資産性を高めていくような努力を常に行っていくことになります。

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再度、「本当に起業がしたいのか?」「アントレプレナー志向なのか?」






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