参入障壁、参入規制







 起業家は新規に事業を行う際には、「顧客がいる市場」の「収益性が高い」事業に参入していくべきなのですが、そのようなビジネスは法的な規制があるなどして、極めて参入障壁が高い場合があります。

 先にも述べたとおり、一般的に「顧客がいるビジネス」とは、「必要性」「緊急性」「痛み」の高いビジネスです。そして、こういったビジネスは顧客が多く、かつ「儲かる」ビジネスであることが多いのですが、そういったビジネスの中には適切な資格を保持している人がチームにいるなどしないと参入できないビジネスも多くなります。

 たとえば、ある人が病気になったときに、その診断をして適切な処置を行うためには、医師免許を持った人が必要です。別の例をあげると、借金をしている人の返済が滞っている場合に、その取り立ての代行業務を行って良いのは、弁護士の資格を持った人であるなどします。このように、生命や健康に関することや、法律的な専門的な知識が必要なビジネスでは、非常に収益性が高い業務である反面、その参入のための規制が高く設定されていることが多くなります。

 どんな時代や地域でも、「癌が治る」「健康になる」「肌がサラサラになる」などといった根拠のない効用を宣伝した医薬品を無免許、無許可で販売して、捕まる人がいます。また、「絶対にもうかる(元本保証)」というようなあり得ない投資話の証券や会員権を、金融機関としての認可を受けていない個人が販売して、顧客からお金を集めて、その結果大損をするというような話は、手を変え、品を変え周期的に起こる事件です。当然、儲かるからといって、このような不法なビジネスは、まっとうな起業家は行ってはなりません。

 また、非常に一般的で誰でも参入してよさそうなビジネスであったとしても、それを行うのに「資格」の必要はなくても「届け出」が必要なビジネスというのも多くあります。特に日本では、行政による規制は諸外国に比べると多いことが知られていますので、事業を開始する前には、どんな事業を始めるにしても、必ず役所に問い合わせるなどして、その参入に何らかの制限があるかということを確認しておく必要があるでしょう。

 行政によって定められる参入の「規制」は、「緩和」されたり「強化」されたりして時々によって変化するものです。最近の日本では、さまざまな業界で「規制緩和」の動きが進んでいたりするため、そのタイミングは起業家にとっては「参入しやすいビジネス」を発見しやすい時期であるといえるでしょう。逆に、食品や医薬品の販売や金融や不動産取引などでは、経済状況などの要因によって突然「規制強化」されることも多くなりますので、市場に参入する際にはそのリスクを十分に検討しておく必要はあります。ただ、規制が強化されるタイミングでは、強化される規制に合わせて「やらなければいけないこと」「買わなければならないもの」というのが発生しやすい時期でもあるため、そのような時期は起業家が活躍しやすい時期ということも言えます。

 いずれにしても、起業家はどんな変化も見逃さずにチャンスに変えていくという努力を怠らないようにすべきでしょう。

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競合分析・自分が差別化できる部分






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