組織内の人的リソースの問題







 ビジネスを開始した直後の起業家の事業で、「商品・サービスの品質」の問題と同様に、その初期の段階で問題となりやすいのは、「人的なリソース」の問題です。

 事業を始めた直後は、通常はどうしても人的なリソースが不足してしまいます。そして、一般的には、充分に組織化されていないことが多いため、そのビジネスの中核となる「商品・サービスの品質」や「会社のオペレーション」など事業に関する様々な事柄が、それを担当する個人の能力に依存してしまいやすくなります。

 そのため、事業における重要な機能を担当している人が「何らかの理由」でいなくなってしまうと、その瞬間から事業が回らなくなってしまうというようなことが起こってしまいます。事業初期の段階で考えられる「何らかの理由」の主なものには、たとえば次のようなものがあります。

・売上が少なく、資金が不足しているために、能力に見合う報酬が払えない
・個人の能力が高いため、他者から引き抜きにあってしまう
・事業初期の段階の殺人的な忙しさのために、体調を崩してしまう
・少人数のグループの中での人間関係の悪化
・各人の目指したいこと、方向性の違い

 こういった理由で、事業を立ち上げた初期の段階では、必ず「人的なリソースの不足」の問題に直面することになります。

 「もともと人的リソースが少ない」、あるいは「ある重要なポジションにいた人がいなくなってしまった」という場合に、それを解決するための手段として、新規に人材を採用することを検討することになります。しかし、この「新規に人材を採用する」という段階でも、ビジネスを始めたばかりの起業家は問題を抱えやすくなります。特に、起業家が採用をする際に直面しやすいのは、「思うような人材が確保できない」という問題です。

 アメリカでは、人材マーケットが日本と比べるとはるかに流動的で、その中にいる人のバックグラウンドや知識レベル(時には言語レベル)がまちまちです。そして、大変な契約社会なので、雇用契約を結んだ際の条項に含まれていない仕事を求めるような場合には、トラブルとなりやすくなります。そのため、人材を募集する際の「仕事内容」「雇用条件」が非常に詳細に具体的に記載されていることが多くなります。その分、採用した人材が「思ったような人材でなかった」場合などには、契約で規定されている範囲内であれば、解雇等も比較的頻繁に行われます。

 日本では、法律によって被雇用者の立場が強く守られているため、正社員として採用してしまうと、解雇しにくくなっています。最低賃金も比較的高く定められているため、起業家にとっての採用のリスクは高いといえるでしょう。

 採用の際、日本では曖昧な条件で募集をかけるということも多くなりますが、より効率的な事業の立ち上がりを目指す際には、具体的に「どのような人物を採用したいのか?」ということを明確にして、採用を行っていくことが重要になります。

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競合の発生・知的財産権の侵害






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