「できない理由」を考えず、「どうやったらできるか」を考えること







 起業家が、社会に対して素晴らしい価値をもたらすと思われるアイデアを思いついた時、現状ではさまざまな制限があって、それを実現するのが難しいと感じることがあります。

 たとえば、何か物を製造して販売するようなビジネスを思いついたとして、それを本当に実行に移すためには、「生産設備を用意」、「原材料の確保」、「製造」などの様々なプロセスが必要になりますが、その方法が全く思いつかないなどという場合です。

 しかし、起業家の考え方として、「今現在自分にないもの」に着目して、それがないことを理由にその実行をあきらめるのではなく、「どうやったらできるのか?」ということについて考え、実行に移すことがより重要になります。

 ただ、あるビジネスアイデアを思いつき、それを実行に移す際には、多かれ少なかれリスクを伴うものであるので、そこについては極めて注意深く検討されていく必要があります。

 これまでも述べてきたとおり、起業家がビジネスをスタートする際に最も重要なことは、「客がいるか?」ということです。その検証を行うために、自分自身で直接一次情報を集めることによって、その実現可能性を確認するという作業が、最初に必要なプロセスとなります。アメリカの起業家研修においては、最初の段階で特に徹底的に行うのは、この部分の検証となります。

 しかし、こういった直接的な調査を行った上で、ある程度の市場性があると考えたにもかかわらず、その実行が行われないということも多くあります。その多くが、調査の過程で、今現在の自分が「できない理由」を並べあげて「実行できない」という結論に達してしまうことによります。

 優秀な起業家によって実行される多くのビジネスアイデアは、それが起業家によって実行されるまでには、様々な人が「思いついた」「市場性があると感じる」というレベルに達していることは多いものです。しかし、それを具体的に実行レベルに移すことができる人というのは非常に少ないのです。

 あるビジネスアイデアを思いついた時に、最も障害となりやすいのは「お金が不足している」という問題になります。しかし、起業家がしっかりとした一次情報に基づく市場調査等を行って、綿密に計画されたビジネスプランを作成し、投資家や銀行などに持ち込んで、それが本当に市場性の高いビジネスであることがきちんと説明できれば、多くの場合は当座のお金の問題は解決することができます。また、技術的な問題や流通の問題がある場合には、効果的な提携関係を模索することによってそれらが可能になることが多くなります。

 昨今の変化の早いビジネス環境においては、新しい市場を切り開く際「誰が最初に始めたか?」ということも、ビジネスにおける影響が非常に大きいものとなります。そのため、起業家は「できない理由」を考えるのではなく、「どうやったらできるのか?」ということについて誰よりも先に考えることが重要といえるのです。

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