スタッフに対して公平(フェア)な評価ができること







 起業家が新たにビジネスに参入するとき、既存の大企業などと比べれば、人的なリソースもきわめて少ない状況でスタートすることが多くなります。

 起業家が行う「人的なリソースが限られている」「まだ十分に組織化されていない」ビジネスの成功は、それに関わる数少ないスタッフの「モチベーションの高さ」も大きな要素となります。そして、スタッフが高いモチベーションをもって目的に邁進できるかは、起業家自身がスタッフに対して公平(フェア)な評価ができるか、が非常に重要な事柄となります。

 起業家がビジネスをスタートした初期の段階で、とにかく事業を立ち上げていかなければならない状況のような場合には、少ないスタッフで目的意識を共有し、それに向かって全員で向かっていくことができる場合が多くなりますが、事業がある程度発展し、そのシステム化を考えるようになるとき、問題が起こりやすくなります。

 起業家は、顧客などに対して、常に前向きな「価値の提案」を行っていくべき存在ですが、事業をシステム化しようとするときには、自分たちが創出するべき本質的な価値とは全く関係のない、あるいは価値の創出を妨げるような形の評価尺度がたくさん用意されることがあります。

たとえば、年齢、性別、人種、国籍、学歴(出身校)、入社年、勤続年数、などです。

 これらの尺度は、外部に対して生み出す価値とはほとんど全く関係しないにもかかわらず、他者を評価するための尺度としてシステム化され利用されるようになります。こういった尺度でスタッフが画一化された評価をされるようになると、個人が事業に対して生み出している本質的な価値とは関係のない不公平な評価が繰り返されるようになるため、スタッフ全体、特に積極的に価値を生み出そうとしていた人のモチベーションが下がることになります。

 この状態が進むと、英語で”Entrepreneurial”(起業家的な、事業家的な)の反意語的な意味としてもよく用いられる ”Bureaucratic”(官僚的な)な組織となり、外部に対しての価値の創出が進みにくい、非生産的なビジネスとなりやすくなります。

 事業を組織化していくプロセスの中で、官僚的な仕組みになりやすいのはアメリカよりも日本の社会のほうが起こりやすいことといえるでしょう。アメリカでは、非正規社員として入社した人であっても、その勤務態度や会社に対しての貢献が認められれば、正社員への昇格ということも起こりやすく、逆に大企業の正社員であったとしても、日本のようには終身雇用が保障されるわけではなく、その貢献が低いと判断された場合には、解雇などもされやすい社会といえます。

 起業家は社会に対して創出する価値を最大化することが求められる存在ですので、そこで働く人を評価するときにも、その「個人が創出している価値」や「貢献度」に着目した、公平な評価を行うようにしていくことが重要といえます。

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