「アントレプレナー」の最初のメンタリティ







 前節で少し厳しい条件を設定して、「どのように行動するでしょうか?」という質問を、さらりとしてみましたが、実はこの質問は、あなたが今起業して成功する可能性があるか、の極めて重要な質問です。

「自分が今、ほぼ体ひとつの状態になってしまった。」

という状態を想定してみてください、ということを言ったとき、そんな状況が起こることを、「考えようともしない」という人がいます。このような人の場合、どんなに学歴の知識がある人であったとしても、起業家として成功する可能性は、今の状態ではほとんど全くありません、ゼロです。

 これまでも何度も出てくる通り、多くの起業家は、起業の直後の段階では、「ヒト、カネ、モノ」など、起業をするのにあってほしい様々なリソースが不足している状態で、時々によって良いほうにも悪いほうに変わる状況の中で、それらを自分の判断・責任でなんとかしていくというメンタリティや行動が必要になります。たかだかセミナーで提示された「仮想の状態」で自分がどうするのか?ということを「考えようともしない」「そんなことはあり得ない」というような場合、その人は「起業して自分の頭で考えて何とかやっていく」ということには向いていないといえるでしょう。

 あるいは、考えようとする場合であったとしても、

「親兄弟、親せき、友達から助けてもらう」
「役所や政府に何とかしてもらう」

 というような、基本的に「他人にどうにかしてもらう」というようなことを真っ先に考えてしまう人もいるかもしれません。自分の目の前からいろんなものがなくなってしまった状態で、とりあえず生き残るための合法的な方法を考えるというのであれば、「何も考えようとしない」より随分ましです。

 現実の社会でこのような状態(いろんなものが急になくなってしまった状態)になってしまった場合に、思考がきわめてネガティブにはたらき、現状が受け入れることができなくなってしまって、「自殺する」であるとか、「詐欺行為などの犯罪行為を行う」というような方向にすすんでしまう人も、実は案外たくさんいます。

 ある人がビジネスをスタートして、「アントレプレナー」として成功していくための最初のメンタリティとは、
「何もない状態であったとしても、自分で考え、その状態を何とかしようとする」
ということです。これは極めて重要な態度となります。

 前節の質問の状態では、これまでどこかに雇用されていた人の場合には、生活の糧を得ていくために、どこかに「雇ってくれる人や会社を探す」という行動に移る人が多いかもしれません。特に日本人にはこういう人が多いでしょう。もちろん、そういった行動も間違った行動では全くありません。しかし、これからの世の中においては、これまで安定的な優良企業とおもわれていた会社が突如傾いてしまって、また野に放り出される、ということもあり得ない話ではないことを昨今の不景気なニュースなどを見るにつけ、実感している人も多いでしょう。できうるならば、自分で事業を起こし軌道に乗せる、ということも選択として考えたほうがよい、といえます。

 「ほぼ体ひとつの状態」になってしまったときに、「雇用主を探す」のではなく、手に職がある人であるならば、その職能を生かして一人でもやっていくことを考えるかもしれません。自分自身に直接的に収益が得られる技能がなかったとしても、事業癖がついている人であれば、その状態から「自分の売れるもの・サービス」を考え、「仕入れ先を探し」、とにかく商売をすることを考える場合もあるでしょう。何か物を仕入れたり、人を雇ったりするのに当座のお金の必要がある場合には、銀行や投資家にその事業の内容を説明することを考えて、さっそく行動に移す人もいるでしょう。

 つまり、「ほぼ自分のからだひとつの状態」という同じような状況が与えられたとしても、どこかに「雇われてやっていこうとする人」と「起業の道へ向かおうとする人」の違いというのは、その考え方や行動の方向性で決まるのです。

 ですので、今現在サラリーマンとして生活していて、まだ「起業したいなぁ」という程度の状態であったとしても、とにかく、どんな商品・サービスで起業し、どのようにプレゼンテーションを行うかということは、できるだけ具体的に考えるようにすべきでしょう。

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