より社会性を意識するアントレプレナー







アメリカの起業家研修プログラムで、「アントレプレナー的なプロセス」を推奨するのは、「アントレプレナーは社会の中での役割としての視野を広く持つべき」、ということ言うことにも関連します。起業をしてビジネスを行っていくと、少なからず顧客、従業員、取引先、株主などとの関係が広がってくることになります。

 起業して顧客に商品・サービスを提供して、何らかの価値を提供していくことでビジネスはスタートしますが、事業主が事業を行うことで提供される価値というのは、顧客に対してのみ提供されるわけではありません。

 たとえば、従業員やアルバイトを雇う場合には、その人たちへの収入の手段を提供することになります。何らかの仕入れを行うようなビジネスであれば、取引先に売上をもたらすことになります。ビジネスを行った結果、大きく利益が出た場合には、その分支払うことができる税金も多くなります。事業を開始するために、だれかに出資してもらっている場合には、利益が出た場合には、事業所得から配当金を支払うこともできるようになります。

 株式を公開している企業が、株主に対して配当を用意するような場合には、より社会的にその恩恵を受ける人が多くなります。株式を公開している企業が、事業を発展させ続け、その企業価値を高め、常に適切な配当を用意するような場合、機関投資家などから長期的に保有してもらえることになります。機関投資家の多くは、年金の原資の運用のために株式市場に投資しているので、起業家がまっとうな事業を行って企業価値を高めていくことによって、年金の原資を増やすことに貢献ができるようにもなるわけです。

 「専門職的なプロセス」で事業を行っていくのも、ビジネスとしては立派な成立のさせ方です。ただ、属人的な技能等に依存した顧客への価値の提供というのは、属人的であるがゆえに社会的な広がりも小さくなりやすくなります。

 ビジネスをスタートするにあたって、あまり社会性の広がりを意識せず、自己完結的な視野で、「専門職的なプロセス」での事業を展開したいと考えているのであれば、自分自身で事業を持って展開する必要がない場合も多くあります。たとえば、大きな会社の傘下に入るなどといったことで、より安定的に「自分のできること」や「自分のやりたいこと」に集中できるようになるのです。

 また、先に説明したように、「専門職的なプロセス」では、顧客に提供される価値が属人的になりやすく、安定的なサービスの提供ができないことが多いことや、属人的なままのサービス提供である場合には、リソース的な限界がすぐに来てしまうなどの問題が発生しやすくなります。

 そのため、アメリカのアントレプレナー教育においては、事業をできるだけシステム化し、「アントレプレナー的なプロセス」で、属人的にならないシステムに依存したビジネスを作り上げていくことを推奨することになります。

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事業の目的=「事業を売却(EXIT)できる状態にすること」






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