スモールビジネスのままで起こる問題







 ビジネス・スタートアップの成立後、「アントレプレナー的なプロセス」に進まず、「専門職的なプロセス」で商品・サービスを提供して、ビジネスを続けていくことも、ひとつの選択です。ただ、そのプロセスを選択した場合に起こりやすい問題点もあります。簡単に整理すると、たとえば、以下のような問題が起こりやすくなります。

・商品・サービスの品質が安定しない
 「専門職的なプロセス」での商品・サービスの提供というのは、属人的な要素(個人の気分、感覚、主観など)に左右されやすく、顧客に提供する価値が安定しにくい。ビジネスが継続的に存続するためには、「顧客が期待する価値」を正確に知り、それを確実に満たしていくことが求められるが、それを正確に把握しないまま、感覚的で漫然としたサービスの提供となるため、顧客からの評価が得られにくい。また、キーパーソンが何らかの要因でいなくなってしまうと、事業自体が危機に陥ってしまう。

・商品・サービスの提供に物理的な限界が発生しやすい
 提供している商品・サービスが評判となり、顧客数が増えた場合に、属人的なビジネスを行っていると、対応できるリソースがないため、受注を制限せざるを得なくなる。単に人を増やすことでは、生産量を上げることができない。また、リソースに限界があるため、たくさんの仕事を自分で行わなくてはならなくなった際、忙しすぎて「本当にこんなことがやりたいのか?」が分からなくなる。その状態が続き、「休みたい」と考えたとしても、思うに任せない状況になっている

・事業が売却できない、後継者ができない
 行っている事業自体が、個人と協力に紐づいてしまっているため、事業の売却がきわめて難しい状態となる。提供される商品・サービス提供がきわめて属人的で「勘と経験」などを基にしてなされるため、後継者を作ろうと思ってもそれが思うように継承できない。

もちろん、「アントレプレナー的なプロセス」に進んだ場合にも、これ以外のさまざまな問題は多く起こるものです。しかし、日米を問わず、企業全体のうちの90%以上がスモールビジネス(中小企業)という形で存在しています。そして、これらの多くが、確な目標や方向性を持たないまま「専門職的なプロセス」で属人的に商品・サービスの提供が行われていて、同じような問題を抱えているのです。そのため、目標設定のために、できるならば「理想の組織図」を設定し、その状態の実現に向けて、「アントレプレナー的なプロセス」で組織化・システム化し、売却可能な状態にまで発展させていくことが望ましいといえるでしょう。

次ページ
アントレプレナーが志向するポジションは「経営者」ではなく「株主」「オーナー」






次ページ
アントレプレナーが志向するポジションは「経営者」ではなく「株主」「オーナー」

起業関連本