アントレプレナーが志向するポジションは「経営者」ではなく「株主」「オーナー」







 起業家がその目標設定をするときに「理想の組織図」を描くわけですが、このときに注意しなければならないことがあります。それは、組織図のトップは「経営者(社長)」のポジションではない、ということです。

 起業家が「理想の組織図」を描く際には、「経営者(社長)」の上に点線を引き、その上に「株主」というポジションを必ず記載しておかなければなりません。

 起業家はビジネス・スタートアップに成功して、その後に「アントレプレナー的なプロセス」によって、属人的でないシステム化・組織化された事業にすることで、「売却可能な状態」を目指すことになります。

 「事業を売却したい」とき、「経営者」というポジションが「起業家自身」でなければならない、つまり、経営が起業家に依存している場合には、まだまだ属人的な状態であって、目標としていた状態とは違う状態となってしまします。つまり、「経営者」というポジションで仕事をすることも、ある意味「専門職的なプロセス」であるといえます。会社の「経営者」というのは、株主総会で承認を受けて経営を委託されている存在であって、「株主」に対して十分な配当が用意できないような場合には、解任を要求されたりするポジションなのです。

 そのため、起業家が「アントレプレナー的なプロセス」を経て目指すポジションというのは、「経営者」というポジションではなく、自分自身が「経営」を行わなくても回転するようになった事業の「株主」というポジションであることが分かります。

 アメリカでは、MBA (Master of Business Management)を取得した「経営管理の専門職」についての見識を持った人も多いですので、「会計・経理」の専門家である会計士・税理士を探すのと同様に、「経営職」の専門家というのを探すのがそれほど難しいことでもないので、そのポジションを起業家自身ではなく、他の人に任せてしまうというあり方も、それほど珍しいことではありません。

 優秀な起業家というのは、商品・サービスについて素晴らしいアイデアがあって、高度な技術的見識や行動力を持った人であることが多いのですが、その場合、必ずしも「経営者(CEO=Chief Executive Officer)」というポジションである必要はありません。「経営者」というポジションを他の人に委託した上で、自分は「技術部門長(CTO=Chief Technical Officer)」を務めるというあり方もあってよいわけです。むしろ、そのほうが「顧客に対して提供する価値を最大化する」という企業本来の目的を達成しながら発展していくためには、合理的なケースというのも多くなります。

 起業家は、ビジネスのスタートアップの段階では、「お金」が不足しているケースが多くなりますので、それを補うために誰かに出資してもらうような場合には、起業家が「株主」というポジションを得られないこともあります。「株を持っていない」「経営者」として経営を行っている場合には、経営の結果が出ない場合には、「株主」という存在から、その座を追われる可能性もあることを常に認識しなければならなくなります。

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「経営者」も実は「株主」にコントロールされる存在






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