事業の目的・使命(ミッション)







 起業する際に自分が提供する商品またはサービスが決まったとしたら、それを事業として提供することで達成したい社会的な目的、ミッションを考えてみることが重要です。

 起業する人の目的というのは様々ですが、たとえば、単に「お金を儲けること」や「起業をすること」が目的である場合には、最初に定義した商品やサービスで事業を行う必要性がない場合も多いのです。

 自分が提供する商品、サービスを提供することに対しての社会的な目的意識や使命感が希薄ということは、その事業を続けていく動機づけが低いということでもあります。そのような場合には、往々にして事業を続けていく動機も持続しにくくなりますので、何かしらの困難が発生した場合に、それを乗り切ろうという気力も発生しにくくなり、その結果、失敗しやすいビジネスとなります。

 ただ、起業をする際に、事業の目的や使命を考えることは大切ですが、逆に事業の目的や使命を「考えすぎる」というのもよいことではありません。というのは、「起業をしたい」と考えて行動を起こす人の中には、自分の事業の「目的」や「使命」だけは立派なものの、それを達成するために何を提供していくのか、が全く見えてこないビジネスプランを書く人が多いからです。

 日本人同士のプレゼンテーションでは、「使命」というような言葉が含まれることは、口幅ったくとらえる人が多いためか、あまり多くないかも知れません。しかし、外国人(特にアメリカ人)の行うビジネスプレゼンテーションなどでは、 Mission!! というような抽象的な事柄が情熱的に語られることが多くなります。日本人として初めてそのようなプレゼンテーションを聞くと、その自信に満ちた情熱的な態度に圧倒されてしまうことも多いのですが、実際のところは「具体的に何が言いたいのかが分からない」あるいはもっと端的に「何も具体的なことはいっていない」ということも多くなります。日本人でも外資系企業の人やアメリカに留学経験がある人、大企業や役所などでの間接部門での経験しかない人などは、起業の際にこのような傾向が強いといえるかも知れません。あるいは、すでに事業に成功して、金銭的な余裕がある人などが慈善事業的なことを行なおうとする場合には、このような概念が多く語られることになります。

 起業家が事業を始める際、その目的や使命を考えることは大変重要ですが、顧客が起業家に対してお金を支払うのは、事業の目的や使命に対してではありません。起業家が提供する商品やサービスという「具体的に自分にとって価値のあること」に対してのみ顧客はお金を支払うのです。

 自分が掲げたいと考える目的や使命は、商品やサービスを提供するという日々のビジネスを確実に行っていくことによって達成されていくものです。まずは、より現実的でかつ分かりやすく、商品やサービスを定義し、それを確実に行っていく上で、自分なりの強い目的意識や使命感を本当に持つことができるかを考えていくことになります。

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中核となる価値(Core Value)とニッチ(Niche)は何か?






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