オペレーション(運用)方針







 事業を行う上で、全体的な方向性としてどのようなオペレーション(運用)方針を取っていくかということは、非常に重要な事柄といえます。商品・サービスに大変な新規性や独自性があったとしても、方針の定め方によっては、全く違うビジネスとなり、事業が発展する方向も大きく変わってくることになります。

 たとえば、「新しい独自のレシピ」を用いた料理を提供していくビジネスを行っていくとします。しかし、「顧客に安価に、おいしい料理を気軽に食べてもらう」のと、「顧客に落ち着いた空間で、新しい独自の料理をゆっくりと味わってもらう」のとでは、当然ビジネスの方向性は全く違うものになります。前者の場合には、「仕入れコストの削減」「設備、インテリアの簡素化」などのコストダウンを中心とした運用方針をとることになるでしょうし、後者の場合には、「上質な原材料の仕入れ先の確保」「閑静な立地」「落ち着ける清潔感のある内装の維持」「接客の細かな気配りの教育マニュアルの作成」などの運用方針が必要になるでしょう。

 このように、起業する際に同じような商品・サービスを提供するにしても、それを顧客に提供する際の方針の立て方で、その後のビジネスの発展性に重大な違いをもたらすことになります。

 こういったオペレーションの方針は、ビジネスプラン作成のためにこれまで考えてきた「商品・サービスの定義」や「対象となる顧客の調査」などを詳細に行っていれば、それに対応した方針は決めやすくなるものではあります。しかし、「専門職的なプロセス」によって「商品・サービス」が起業家自身から提供されるスモールビジネスの場合には、この方針自体が決まっておらず、その時々に獲得できた顧客の状況に向けて方針を変えながら進むようなケースが多くなります。そして、明確な方針のない(考える時間もない)まま、スモールビジネスにとどまり続けることになります。

 これまで、ビジネスをスタートさせる際に「自分のやりたいこと」を中心とした考え方で事業を開始すると、「顧客がお金を払うこと」と一致しない可能性が高く、失敗しやすいことは議論してきました。それでも「自分が提供する商品・サービス」と「顧客がお金を払うこと」が一致し、事業として回り始めた後で、自分がその事業と「どのような方向性に進みたいのか?」という方針を考え行くということは、大変に重要なことといえます。

 もっとも理想的なのは、「事業の方向性」と「自分自身の目標・方向性」が完全に一致し、それに向けて迷いなく事業を進めていける場合です。しかし、現実のビジネスにおいては、そうではない場合も多くあります。(むしろ、そうでない場合のほうが多いといえるかも知れません。)それでも、事業を維持、拡大させていくプロセスにおいて、それを行っている起業家自身が持っている「事業に対しての動機付け(モチベーション)」というのは、そのビジネスの成否にかかわる非常に重要な問題である場合が多いので、それらを一致させていくべく、常に行動を行っていくことは必要なことといえるでしょう。

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事業のシステム化のための、数値化・マニュアル化






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