危機が起こったときの対応の原則







 起業家が事業を進めていく中で、その事業の存続にも影響するような危機が起こってしまうことは、なかば防ぐことができないことなので、それが起こってしまったときに、どのように対応をするかということが非常に重要になります。

 この章でいくつかあげたように、事業を行っていく上での危機の要因となりうることは様々であって、それらが起こっている状況によって起業家は個別に適切に対応を行わなければならないものですが、危機対応のためのごくごく一般的な原則といえることはいくつかあります。

・正直・誠実であること
 事業を行う上で危機的といえる状況に陥ったときに、その対応として絶対にやってはいけないことは、一時的にその場をしのぐために「ウソをつくこと」です。当座の問題の回避のために外部の顧客、株主、従業員などの利害関係者に対してウソをついてしまうと、ウソが判明したとき、その後は何を言っても信頼されなくなります。その結果、危機的な状況を拡大する結果となります。危機的な状況であるときほど、正直で誠実でなければなりません。

・迅速に継続的に対応すること
 事業を行う上での危機というのは、多くの場合、突然目の前に現れて、何もしないと刻々とその被害が拡大していくことになります。危機的な状況とは、通常は大変に混乱した状況であるので、「どれが正しい情報かが分からない」ということも多くなりますが、そのような場合でも、そういう状態であることを正直に逐次知らせていくということが重要になります。危機的な状況で「情報が何も出てこない」のは、利害関係者の不安・不信を拡大させることになります。

・冷静に首尾一貫した対応をすると
 混乱した状況の中では、利害関係者は特に冷静さを失った反応をするようになります。周囲が冷静さを失った状況で、その中心で起業家自身が冷静さを失った対応を取ってしまうと、その混乱が拡大してしまいます。また、混乱しているその時々の状況の中で、対応する人間によって「出てくる情報が違う」という状況は、冷静さを失っている利害関係者をさらに憤慨させることにつながるため、対応する側は首尾一貫した対応となるように体制を整えておく必要があります。

 様々な要因によって起こる危機は、事実として起こっている出来事が同じことであったとしても、そのコミュニケーションの取り方で全く招く結果が違うものとなります。そのため、危機の際のコミュニケーションは原則に則ったものである必要があります。

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危機対応こそ「システム化」






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