横浜ベイスターズの売却が破談になったとの報道があったので、そのあたりのことについて自分(企業買収等に関しては全くの素人)の知識で今感じることをメモ。
・ピカピカの高収益企業を売却するという発想があまりない
アメリカの起業家研修では、ビジネスプランを作る際「どのように EXIT するか」ということを考えるように指示されるが、その際「資金力のある他社に価値が高い状態で売る」ということも有力な選択肢としてある。
たとえば、IT分野で起業をしたとして、アメリカではマイクロソフトやグーグルといった超有名企業に吸収合併してもらうというようなことを目指すことも多いが、日本でソフトバンクや楽天に買収してもらうというようなことを目標にしている会社は多くなさそう。(ライブドアショックの直前には少し広がった考え方かも。)教育として「一国一城の主」とか「鶏口牛後」、「個性の時代」というようなことが影響?
大型の企業買収の話は、多くの場合は収益性が低くなって全く立ち行かなくなった企業の救済の話が多いようなイメージ。もちろんアメリカでもそういう話も多いと思うが、「にっちもさっちもいかなくなる」前の段階、たとえば赤字が出た瞬間に大規模なリストラをするとか、赤字転落する前の企業価値がまだ高い段階で売却をもちかけるという話になりそうで、日本の会社ほどひどい状態で売りには出なさそう。
・売る側が「売りはらった後のこと」に対して細かく条件をつけるらしい
横浜ベイスターズ買収の件では、「球団人事に手をつけるな」「本拠地は移転するな」ということを、売る側のTBSが条件をつけたとのこと。
買う側にとっては「経営陣をどうするか」とか、「どこを対象顧客に対して商売をするか」ということは、今後の収益性や企業価値にかかわる最も重要なこと。それを経営が立ち行かなくなって「とにかく買ってほしい」と思っている売り手側が条件を付けるというのは非常に不思議な感覚。特に日本では、終身雇用の考え方がまだ根強いので「リストラ」「人員削減」ということに対して、強烈な拒否反応があって、「リストラをしない」ということが売却の条件になることもあるらしい。
オーナーが代わるということ自体が文字通り「リストラ」で「構造が変わる」ということだし、会社の収益性で人件費というのは最もコストのかかる部分でもあるので、そこをいじらずに構造を変えることはかなり無理な注文。それでうまく行くなら、「売らずに自分が何とかしろ」という話。自分は赤字会社を売り払って対価を得ておきながら、うまく行ってない赤字会社の状態を「そのままにしろ」と条件を付けて、買ってくれた側に押しつけるというのは普通は通らない。
・ほぼ無関係の外野が「理念」「文化」「伝統」といったことにうるさく、買収しようとする側のイメージが強烈に低下する
今回の横浜ベイスターズの件では、神奈川県知事が
「自分の会社の宣伝さえできればいいという論理に大きな違和感を覚える」
「一時代前の感覚。企業の宣伝のために使うやり方ではプロ野球自体が発展していかない」
と発言したとのこと。
これに限らず、ただの民間企業同士の話で、何かと「理念」「文化」「伝統」ということが外野で議論されやすい。民間企業である以上は、収益性の高い事業を運営して維持していかなければならないのに、企業の買収などの話が持ち上がると必ずこういったことが議論になる。
顧客(ファン)が、このような「理念」「文化」「伝統」などに価値を感じて商品・サービスをお金を出して買ってくれたり、スポンサーになってくれるのであれば収益性も上がるのだけれども、基本的にこういうことをいう人たちほど外野でお金は出さない。
厄介なのは、マスコミなどでこういったことが報道されると、世論は「理念」「文化」「伝統」という得体のしれないものを支持して(というより、マスコミがそういう方向で報道するので)、「経営に失敗して売りに出した側(しかも今回は売主がマスコミそのもの)」でなく、本業をしっかり行っていて、買収して救済しようとする側の方のイメージが低下してしまう。
結局、今回の件は破談になったということなのだけれども、通常は「収益性の無い企業」を買収してくれる企業もなくなった場合には、いずれ倒産ということになる。倒産してしまうと、社員は全員職を失う、少なからずいた顧客も商品サービスが買えなくなる、株主も会社の価値が全く無価値化して大損をする。売る側が落とし所を間違えて、自分たちが望まなかった最悪の状況になってしまうという話が日本では多そう。
もっとも、アメリカ人の起業の考え方として、
「だらだらと悪い状態の会社を続けるよりは一度リセットのためつぶして、ゼロから全く新しくリスタートするのも悪くない」
という考え方も多いようなので、「売却の交渉がうまくいかなかった」ということが必ずしも悪いわけでもないのかも。
・ピカピカの高収益企業を売却するという発想があまりない
アメリカの起業家研修では、ビジネスプランを作る際「どのように EXIT するか」ということを考えるように指示されるが、その際「資金力のある他社に価値が高い状態で売る」ということも有力な選択肢としてある。
たとえば、IT分野で起業をしたとして、アメリカではマイクロソフトやグーグルといった超有名企業に吸収合併してもらうというようなことを目指すことも多いが、日本でソフトバンクや楽天に買収してもらうというようなことを目標にしている会社は多くなさそう。(ライブドアショックの直前には少し広がった考え方かも。)教育として「一国一城の主」とか「鶏口牛後」、「個性の時代」というようなことが影響?
大型の企業買収の話は、多くの場合は収益性が低くなって全く立ち行かなくなった企業の救済の話が多いようなイメージ。もちろんアメリカでもそういう話も多いと思うが、「にっちもさっちもいかなくなる」前の段階、たとえば赤字が出た瞬間に大規模なリストラをするとか、赤字転落する前の企業価値がまだ高い段階で売却をもちかけるという話になりそうで、日本の会社ほどひどい状態で売りには出なさそう。
・売る側が「売りはらった後のこと」に対して細かく条件をつけるらしい
横浜ベイスターズ買収の件では、「球団人事に手をつけるな」「本拠地は移転するな」ということを、売る側のTBSが条件をつけたとのこと。
買う側にとっては「経営陣をどうするか」とか、「どこを対象顧客に対して商売をするか」ということは、今後の収益性や企業価値にかかわる最も重要なこと。それを経営が立ち行かなくなって「とにかく買ってほしい」と思っている売り手側が条件を付けるというのは非常に不思議な感覚。特に日本では、終身雇用の考え方がまだ根強いので「リストラ」「人員削減」ということに対して、強烈な拒否反応があって、「リストラをしない」ということが売却の条件になることもあるらしい。
オーナーが代わるということ自体が文字通り「リストラ」で「構造が変わる」ということだし、会社の収益性で人件費というのは最もコストのかかる部分でもあるので、そこをいじらずに構造を変えることはかなり無理な注文。それでうまく行くなら、「売らずに自分が何とかしろ」という話。自分は赤字会社を売り払って対価を得ておきながら、うまく行ってない赤字会社の状態を「そのままにしろ」と条件を付けて、買ってくれた側に押しつけるというのは普通は通らない。
・ほぼ無関係の外野が「理念」「文化」「伝統」といったことにうるさく、買収しようとする側のイメージが強烈に低下する
今回の横浜ベイスターズの件では、神奈川県知事が
「自分の会社の宣伝さえできればいいという論理に大きな違和感を覚える」
「一時代前の感覚。企業の宣伝のために使うやり方ではプロ野球自体が発展していかない」
と発言したとのこと。
これに限らず、ただの民間企業同士の話で、何かと「理念」「文化」「伝統」ということが外野で議論されやすい。民間企業である以上は、収益性の高い事業を運営して維持していかなければならないのに、企業の買収などの話が持ち上がると必ずこういったことが議論になる。
顧客(ファン)が、このような「理念」「文化」「伝統」などに価値を感じて商品・サービスをお金を出して買ってくれたり、スポンサーになってくれるのであれば収益性も上がるのだけれども、基本的にこういうことをいう人たちほど外野でお金は出さない。
厄介なのは、マスコミなどでこういったことが報道されると、世論は「理念」「文化」「伝統」という得体のしれないものを支持して(というより、マスコミがそういう方向で報道するので)、「経営に失敗して売りに出した側(しかも今回は売主がマスコミそのもの)」でなく、本業をしっかり行っていて、買収して救済しようとする側の方のイメージが低下してしまう。
結局、今回の件は破談になったということなのだけれども、通常は「収益性の無い企業」を買収してくれる企業もなくなった場合には、いずれ倒産ということになる。倒産してしまうと、社員は全員職を失う、少なからずいた顧客も商品サービスが買えなくなる、株主も会社の価値が全く無価値化して大損をする。売る側が落とし所を間違えて、自分たちが望まなかった最悪の状況になってしまうという話が日本では多そう。
もっとも、アメリカ人の起業の考え方として、
「だらだらと悪い状態の会社を続けるよりは一度リセットのためつぶして、ゼロから全く新しくリスタートするのも悪くない」
という考え方も多いようなので、「売却の交渉がうまくいかなかった」ということが必ずしも悪いわけでもないのかも。